わたしたちが考えるRaaS(Realestate as a Service:リアルエステート・アズ・ア・サービス、略して、ラース。リアース(REaaS)とも言う)とは、不動産を”仮想化”し、アセットを特定の単一用途に限定することなく、その可能性を引き出して、利用者のニーズの変化に細やかにあわせて利用していくというコンセプトです。不動産をRaaSとみなすことにより、不動産をアセットとして捉えるだけでなく、使われ方に着目することで、もっと柔軟に不動産の価値を引き出していきます。
RaaS(ラース)を実際に展開している例をあげます。
総合デベロッパーが展開するサテライトオフィス事業において、サテライトオフィス会員がオフィスアセットだけでなく、ホテルアセットもワークスペースとして利用できる事例は、まさにRaaS(ラース)の概念に則ったサービスとなっています。
住戸に、リモートワークで活用できるシェア空間を併設したコリビング(co-living)は、コミュニティマネジャーを用意したり、アプリなどのITを用いて住民同士のコミュニティ形成を後押しすることで、住むこととつながりをつくることを後押ししています。つながりはもしかしたらしごとにも発展しうる可能性もあり、コリビングの概念は、住居とオフィスといったアセットの区切りをあいまいにし、職住のあいまった住まいへのニーズに応えようとしています。
高級レストランが夜しか営業していないことに着目し、日中の時間帯をフリーランスのワークスペースに開放するサービスは、1つのアセットで2周の利用を行う二毛作のような視点もRaaS(ラース)といえるでしょう。このように、RaaS(ラース)は、シェアリングエコノミーの発想も包含している概念です。
短期的には、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、都市部においては、オリンピック需要を見込んだホテルが供給過多、オフィスについても整理再編の動きがあることから中期的には現在と同様の用途としては需要減少が見込まれ、それに伴い商業施設の需要も伸び悩むことが予想されます。都市部での住宅の需要は堅調ですが、ほかアセットの需要を全て吸収するのは難しいでしょう。長期的には国内の生産年齢人口の減少が想定される中ででも、高経年の既存アセットが増えていくことを考えると再開発の要請は続くでしょう。単なるアセットの需要は、基本的に人口連動すると考えられますが、利用用途にあわせた運用を伴って効用を生み出すオペレーショナルアセットは、例えばホテルのように人口減少社会、人口停滞社会においても諸外国や国内から観光客を呼び込むことができます。同様にオフィスにおいても、個人を狭いデスクに閉じ込めるのではなく、目的に応じて柔軟に拠点を変えていけば、1個人あたりの利用拠点数は増加します。都市の新陳代謝を担うディベロッパーの目には、既存顧客への新しい提供商品、あるいは、既存商品を活かした新規顧客の開拓として、RaaS(ラース)はビジネスフロンティアにうつることでしょう。
従来のアセットは、用途が限定的であったため、運用は比較的単純でした。しかし、仮に昼間はワークスペース、夜は飲食店となるようなアセットを運用していくとしたら、飲食店の予約管理だけでなく昼間のワークスペースの予約管理が必要になります。両者には異なるノウハウが求められますから、単純に考えればオペレーションコストは二倍になってしまいます。しかし、オペレーションをITで実現するようなSaaSを導入することでそのコストは低減でき、より複雑なリソース(時間・空間)配分を実現することができるでしょう。このようにRaaS(ラース)はテクノロジーの活用が前提となっています。
SUUMOリサーチセンターでは、RaaS(ラース)のコンセプトが不動産産業に与える影響や事例の創出に興味を持っています。調査・協業・講演・ディスカッションについてお気軽にご連絡ください。